役員変更登記

~株式会社の役員について~

・取締役

取締役は1人以上設置しなければならず、住所と氏名を登記する必要があります。

なお、「取締役会設置会社においては、「取締役3名以上」を置く必要があり、「取締役のうち1名以上を代表取締役」とします。 なお、取締役会設置会社には監査役の設置義務があります。

取締役会設置会社で、特別取締役を設置する場合、取締役が6名以上、そのうち社外取締役を1人以上としなければならず、特別取締役による議決の定めの規定(委員会設置会社は不可)、特別取締役の氏名を登記する必要があります。

・監査役

監査役の設置は、定款によって任意で定められますが、定款に設置の定めがある場合、監査役を1人以上選任し、その氏名を登記しなければなりません。

なお、取締役会設置会社には監査役の設置義務があります。

監査役会設置会社においては、「監査役を3名以上」置かなくてはならず、うち過半数は、社外監査役とする必要があります。監査役会を設置した場合、取締役会も設置せねばなりません。

・会計監査人

会計監査人の設置は、任意ですが、定款に設置の定めがある場合は、その氏名(名称)を登記せねばなりません。

ご案内

取締役・代表取締役・監査役の他、清算人・破産管財人なども株式会社の役員であり、これらの変更登記も必要になりますがご案内が複雑になりますので、ここでは省略してあります。詳しくはお問い合わせ下さい。

ご注意

株式会社の役員の資格には、次のとおりの制限があり、下記に該当する場合には、役員になることが出来ません(会社法331条)

  • 「法人」
  • 成年被後見人」または「被保佐人
  • 会社法、会社更生法、破産法、証券取引法等に定める罪により刑に処せられ、その執行を終わった日またはその執行を受けることのなくなった日から「2年を経過しない者」(刑に処せられた者には執行猶予の言渡しを受けた者も含む)
  • 上記以外の「罪により禁固刑以上の罪に処せられ、その執行を終わった日またはその執行を受けることのなくなった日からは「刑の執行を受けることのなくなるまで」の者(但し、執行猶予中の者を除く)
  • 未成年者は、民法上は「行為能力なき者」として取り扱いますが、意思能力を有する場合は会社の役員となることが出来ます。

POINT

満16歳に達した者は市区町村役場に印鑑の登録が可能であり、印鑑証明書の交付を受けられます。

~役員の任期について~

【役員変更登記のサイクル】

2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目
取締役の任期
監査役の任期

~上図の見方~

取締役の任期 監査役の任期
役員変更登記が必要な年
役員変更登記が必要な年(取締役と監査役の両方の登記を同時に行える年)

なお、「会社設立当初」・「組織変更当初」の任期は、取締役・監査役ともに1年ですので、上図は2年目以降を表しています(詳しくは引き続き下をご覧下さい)。

取締役の任期は「原則2年」です

ただし、株式の譲渡制限に関する定めのある株式会社は、定款変更決議によって、取締役の任期を最長10年までにすることができます。

代表取締役の任期は、「取締役としての任期と同一」です

ご注意

設立当初(有限会社からの組織変更による設立を含む)の任期は「1年」です(2006年4月以前に設立した株式会社のみ)。

定款で、取締役の任期を、「任期中の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時まで」と定めている場合は、任期中の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時まで、伸長することが出来ます。

「任期途中で退任した取締役の補欠として選任された取締役の任期を、前任者の残りの任期と同一とする」、「任期途中で増員した取締役の任期を、他の取締役の任期と同一とする」…と、定款に規定することも出来ます。この場合は、定款の規定が優先します。

代表取締役が、取締役を辞任すると、取締役を辞任した日をもって、代表取締役の資格も喪失し、退任することになります。

監査役の任期は、「就任後4年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時まで」です。

株式の譲渡制限に関する定めのある株式会社は、定款変更決議によって、監査役の任期を最長10年までにすることができます。

資本金1億円未満で、株式の譲渡制限に関する定めのない小会社は、2006年5月1日の会社法施行により任期満了となり、同日から6箇月以内に役員変更登記をする必要があります。

なお、2006年5月の会社法施行後は、監査役の設置が任意となりました。

ご注意

設立当初(有限会社からの組織変更による設立を含む)の監査役の任期は、「就任後1年以内」の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時までです(2006年4月以前に設立した株式会社のみ)。

「任期途中で退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を、前任者の残りの任期と同一とする」、…と、定款に定めることが可能です。ただし、監査役が1名のみの株式会社の場合は、定款に規定は適用されません。

破産以外の事由によって会社が解散した場合、解散登記の時点で、取締役は当然退任しますが、監査役は退任にはならず、清算結了登記によって、会社の法人格が完全に消滅するまで、監査役の法定任期は継続します。

~役員の変更について~

商業登記法に定める役員変更とは、役員が交替する場合だけではありません。
下記に該当される場合は、登記が必要となりますので、ご注意下さい。

・役員が「就任」した場合

役員を増員した場合、同一人が再選された場合で重任に該当しない場合

・役員が「重任」した場合

同一人がその任期満了と同時に再選された場合

・役員が「辞任」した場合

任期途中で取締役を辞めた場合

・役員が「辞任」した場合

任期途中で取締役を辞めた場合

・役員が「退任」した場合

任期が満了した場合

・役員が「死亡」した場合
・役員が「解任」した場合

不正行為発覚等、株主総会の決議により取締役または監査役を解任した場合、取締役会の決議により代表取締役を解任した場合、裁判により役員を解任した場合

・役員が商法所定の「欠格事由」に該当した場合
・役員の「氏名に変更が生じた」場合

婚姻・協議離婚・養子縁組・協議離縁・帰化…により氏名の変更が生じた場合、もしくは裁判所の許可によって氏名の変更が生じた場合

・代表取締役の「住所に変更が生じた」場合

住所移転のみならず、住所の場所そのものに変更がない場合でも、住居表示の実施や町名地番に変更があった場合を含みます 単に最小行政区画に変更があった場合、例えば、市区町村名に変更があったのみの場合は該当しません。

~役員変更登記の申請について~

株式会社の役員に変更があった場合、変更があった日から、本店所在地において2週間以内に、当該変更登記を申請しなければなりません。

ご注意

役員に変更が生じたにもかかわらず、期間内にその登記申請手続を怠った場合、もしくは選任手続を怠った場合は、地方裁判所より、商法違反事件として過料決定が下されます。

万一、過料決定が確定しますと、当該株式会社の代表者は、検察庁に過料(金100万円以下)を、地方裁判所に過料決定の手続費用(郵便料金として金80円)を、納めなければならなくなります。

登記の申請は、本人が申請する場合以外は、司法書士以外の者が業として登記申請手続を代理することは、法によって禁じられております。

~役員変更登記の必要書類について~

下記は、当事務所にご依頼される場合を前提としています。

また、下記以外に、司法書士の報酬、登録免許税(法務局へ納付)、会社登記簿謄本代、法務局への郵送料(あるいは交通費)などの実費を請求させて頂きます。

1.登記内容にかかわらず必要な書類
・委任状 【1通】

会社代表印(法務局に届出の印鑑)の捺印を要します。

・会社登記簿謄本 【1通】

ご用意いただくのはコピーで結構です。

ご注意

当事務所に以前もご依頼いただいたことがあるお客様は、データを管理しておりますので、コピーも不要です。

・印鑑カード(印鑑証明書を併せて必要とされるお客様)

代表者の生年月日を併せてお知らせ下さい。

2.役員が辞任した場合の必要書類
・(旧役員の)辞任届 【1通】

辞任の意思表示を確認するため、株主総会議事録の記載とは別に、辞任届をご用意いただき、必ず実印を押していただきます。

・(旧役員の)印鑑証明書 【1通】

辞任の意思表示を確認するため、必ずご用意いただきます。

・取締役会議事録 【1通】 ※取締役会設置会社の場合

「取締役」の印鑑は、実印である必要はありません。

ただし、代表取締役の選任に関する決議の場合は、取締役会議事録の、出席取締役全員(代表取締役を含む)の印鑑は、「実印」でなければなりません(代表取締役が、「再選・重任した場合」、引き続き「取締役として残る場合」…以上の場合で従前の代表印を議事録に押印可能な場合を除く)。

「代表取締役」の印鑑は、会社代表印でなければなりません。

ご注意

資本金が金1億円以上、もしくは負債の額が金200億円以上の会社は、監査役は取締役会に出席することが出来ますが、出席した場合には記名捺印の義務があり、その印鑑が実印であるべきか否かにつきましては、前記取締役と同様の取扱いです。

・株主総会議事録 【1通】
・定款 【1通】

議事録の記載上、決算期が明確でない場合、役員の任期満了の時期が不明なため、会社の現行定款の写しを作成し、代表取締役の奥書(当会社定款に相違ない旨)ならびに会社代表印の捺印を要します。

・新役員の就任承諾書 【1通】

「取締役」の印鑑は実印であることを要しません。「代表取締役」の印鑑は実印でなければなりませんが、同一人が再選された場合には、この限りではありません

ご注意

就任(重任を含む)した役員が、その選任決議機関(取締役は株主総会、代表取締役は取締役役会)に出席し、その議事録に就任を承諾した旨の記載があり、かつ、その議事録に出席取締役として記名捺印している場合には、議事録の記載を援用できますので、就任承諾書を別途用意する必要はありません(但し、一部でもこの条件を満たさない役員が存在する場合には、その役員についてのみ就任承諾書を別途提出しなければなりません)。

・(出席取締役全員の)の印鑑証明書 【1通】

代表取締役の再選の場合を除き、代表取締役の選任に関する取締役会議事録の出席取締役全員(代表取締役を含み、資本金が金1億円以上または負債の額が金200億円以上の会社の出席監査役も含みます)の印鑑は実印でなければならず、各自の印鑑証明書各1通を要します。

代表取締役の印鑑証明書は、その認証日(市区町村役場の交付した日)から、登記申請日時点で3か月以内でなければなりません。

・税理士・公認会計士であることを証する書面 【1通】

会計参与、会計監査人が就任された場合のみ、会計参与、会計監査人が法人の場合、法人登記事項証明書が必要となります。

ご注意

代表取締役の印鑑証明書は、代表取締役の選任決議を証明する書面としての取締役会議事録、就任承諾書、印鑑届書…に、本来であればそれぞれ必要ですが、互いに援用が可能ですので、1通あれば構いません。

・印鑑届書 【1通】

代表取締役の再選の場合を除き、代表取締役の就任の場合は、代表取締役の印鑑届書(印鑑届書ならびに印鑑紙)の提出を要し、印鑑届書には代表取締役の実印を、印鑑紙には会社代表印を、それぞれ捺印しなければなりません。

印鑑届書の用紙は、管轄法務局がコンピュータによる商業登記事務取扱庁であるか否かによって異なりますので、ご注意下さい。

3.役員が死亡した場合の必要書類
・死亡を証する書面 【1通】

死亡の記載のある住民票(本人の抄本で可)、もしくは戸籍の謄本または抄本、死亡診断書、遺族からの死亡届、のいずれかですが、死亡診断書・死亡届ともに捺印は実印であることを要しません。

4.役員を解任した場合の必要書類
・解任を証する書面 【1通】

取締役または監査役の解任の場合は株主総会議事録、代表取締役の解任の場合は、取締役会議事録を要します。

5.役員の氏名または住所に変更が生じた場合の必要書類
・各変更を証する書面 【1通】

氏名の変更の場合には、戸籍の謄本または抄本のコピー、住所の変更の場合には、その変更内容の判る住民票もしくは戸籍の附票のコピーを要し、これらの書類の原本は必要ありません。

POINT

ただし、住所の変更が住居表示実施または町名地番変更の場合には、住居表示実施証明書または町名地番変更証明書の原本を要します(原本を提出することによって、登記の際に通常納付する登録免許税が非課税になります)。

~必要書類の作成について~

各書類のご用意は当事務所でも可能です。お気軽にご利用下さい。

ご注意

捺印はきちんと鮮明に押してください。

議事録などの捺印は鮮明に捺印することを要し、印影が不鮮明な場合には、登記申請が補正(登記申請書に不備があるため、法務局が登記手続を一旦止めて、申請人または代理人にその補正をさせること)となり、印鑑の捺し直しを命じられ、登記に、余分な時間を要する場合もあります。

議事録などの記載を訂正される場合には、間接訂正(訂正個所のある頁の上部または下部余白に訂正印を捺して「削除~字、加入~字」と記載する方法)しか認められておりません。

なお、訂正印は、その書類の作成権限を有する者全員の印鑑を要しますのでご注意下さい(例えば、代表取締役A・取締役B・取締役Cの作成にかかる取締役役会議事録の訂正は、A・B・C全員の訂正印を要します)。

POINT

~株式会社の役員を減らしたい時、任期を伸ばしたい時のご注意~

平成18年5月1日に会社法が施行されて5年余り、以前の商法の規定と現在の会社法の規定を混同されている方は少なくありません。

株式会社には、最低限、株主総会と取締役1名以上を置けば設立することができますが、既存の株式会社について、取締役1名を残して他の役員が辞任するだけということができるかと言うと、他の役員の辞任登記だけでは手続ができない場合があります。

また、株式会社の役員の任期は、最長で10年まで伸ばすことができますが、既存の株式会社について、取締役の任期を2年より長く、監査役の任期を4年より長く、伸長できるかと言うと、それだけでは済まない場合があります。

株式の譲渡制限の規定の登記がない株式会社を公開会社と呼びますが、公開会社は取締役会を設置しなければなりません。

取締役会設置会社は、取締役3名以上、監査役1名以上を置かなければなりません。

また、公開会社は役員の任期を伸長することができません。

一般に公開会社と言うと株式市場に店頭公開している大会社を想定しますが、ここで言う公開会社とは株式の譲渡制限の規定の登記がない株式会社を指します。

会社法施行以前に設立された株式会社の多くは株式の譲渡制限の規定の登記がありますが、昭和41年7月1日に施行された商法改正以前に設立された株式会社の場合、その後で株式の譲渡制限の規定を設置する登記をしていない限り、株式の譲渡制限の規定の登記はありません。

定款で株式の譲渡制限に関する規定を定めることが義務付けられたのが、この商法改正の時でしたが、古くからある株式会社や、古くからある株式会社を引き継いだ株式会社の場合、株式の譲渡制限の規定の登記があるか否か、確認してみましょう。

取締役3名、監査役1名の公開会社が役員を減らすだけの場合、株式の譲渡制限の規定の設置、取締役会設置会社の定めの廃止、もしくは監査役設置会社の定めの廃止を要する場合があります。

また、公開会社が役員の任期を伸ばしたい場合は、株式の譲渡制限の規定の設置を要します。

いずれの場合も定款変更の決議を経て、その旨の登記申請手続も必要になりますので、役員変更だから登録免許税が1万円、役員の任期は登記事項ではないので登記申請手続が必要ではない、ということでは済みません。

ご案内

なお、詳しいことにつきましてご不明な点等がございましたら
こちらからお問い合わせください