抵当権の設定・債務者の変更

※ここでは、「抵当権」、「根抵当権」を併せて、「(根)抵当権」と表現します。

~所有物件に関する(根)抵当権の設定または債務者の変更について~

下図のように、「会社名義の不動産」に「債務者を取締役個人名義とする(根)抵当権」を設定する場合、「利益相反」に該当します。

抵当権と不動産

この場合、株式会社においては、会社法の規定により「取締役会」あるいは「株主総会」の承諾を得なければなりません。

これらの規定は、会社の取締役が、会社の財産を勝手に処分して、会社に不慮の損害を与えることを防止するもので、後記のケースの登記を申請する際には、担保物件を所有する会社の承諾書を添付しなければなりません。

~利益相反に該当するケース~

(根)抵当権を設定する場合

不動産の所有 抵当権の債務者 結果
A有限会社 A有限会社の取締役甲個人

A有限会社所有物件を担保に、A有限会社の「取締役甲個人」を債務者とする(根)抵当権を設定する場合、利益相反事件に該当します。

この決議に関し、取締役・甲は議決権がありません。

A有限会社の承諾書、会社登記簿謄本、出席取締役の印鑑証明書が必要になります。

B株式会社 B株式会社&B株式会社の取締役乙個人

B株式会社所有物件を担保に、B株式会社およびその「取締役乙個人」を債務者とする(根)抵当権を設定するとき、利益相反事件に該当します。

この決議に関し、取締役・乙は議決権がありません。

B株式会社の承諾書、会社登記簿謄本、出席取締役の印鑑証明書が必要になります。

C有限会社 D株式会社(C有限会社の取締役丙が、D株式会社の代表取締役を兼任している場合)

C有限会社所有物件に、D株式会社を債務者とする(根)抵当権を設定する場合で、C有限会社の「取締役丙」が、D株式会社の代表取締役を兼務している場合、利益相反事件に該当します。

この決議に関し、取締役・丙は議決権がありません。

C有限会社の承諾書、出席取締役の印鑑証明書、C有限会社とD株式会社双方の会社登記簿謄本が必要になります。

(根)抵当権を変更する場合

現行の債務者 変更後の債務者 結果
A有限会社
※A株式会社所有の不動産
A有限会社の取締役甲個人

A株式会社所有物件に、債務者をA株式会社として設定登記済の(根)抵当権につき、債務者をA株式会社の取締役・甲に交替的に変更するとき、利益相反事件に該当します。

この決議に関し、取締役・甲は議決権がありません。

A株式会社の承諾書、会社登記簿謄本が必要になります。

B株式会社
※B株式会社所有の不動産
B株式会社&B株式会社の取締役乙個人

B有限会社所有物件に、債務者B有限会社として設定登記済の(根)抵当権につき、債務者をB有限会社およびその取締役・乙に追加的に変更するとき、利益相反事件に該当します。

この決議に関し、取締役・乙は議決権がありません。

B有限会社の承諾書、会社登記簿謄本 をご用意ください。

C有限会社
※C株式会社所有の不動産
D株式会社(C有限会社の取締役丙が、D株式会社の代表取締役を兼任している場合)

C株式会社所有物件に、債務者をC株式会社として設定登記済の(根)抵当権につき、債務者をD有限会社に交替的に変更する場合で、C株式会社の代表取締役・丙が、D有限会社の取締役を兼務している場合、利益相反事件に該当します。

この決議に関し、取締役・甲は議決権がありません。

C株式会社の承諾書、出席取締役の印鑑証明書および、C株式会社とD有限会社双方の会社登記簿謄本が必要になります。

必要書類について(承諾書)

・取締役会議事録

株式会社で取締役会非設置会社は株主総会議事録

特例有限会社は株主総会議事録

取締役が議事録に捺印すべき印鑑は、各取締役個人の実印 ですが、会社代表者で法務局に代表印を届け出た取締役に ついては、会社代表印です。

・印鑑証明書

会社代表者で、法務局に代表印を届け出た代表者は会社の印鑑証明書

上記以外の取締役は、個人の印鑑証明書

いずれも登記申請時点で3か月以内のもの

・会社登記簿謄本

資格証明書または会社登記簿抄本での代用は不可

会社間の利益相反取引の場合は、相手方の会社登記簿謄本も必要

ご案内

なお、詳しいことにつきましてご不明な点等がございましたら
こちらからお問い合わせください