所有権移転の登記手続請求事件

~ご質問~

古くに不動産の売買取引が行われていながら、所有権移転登記が為されておらず、結果、現在も登記記録上の所有者は売主名義のままになっている。

取引が行われたのが50年以上も前であり、売主の所在が不明で連絡が取れないばかりか、健在なのかどうかも分からない。

当時の売買契約書等も既にないが、不動産の引き渡しは確かに行われており、当該不動産は私のものだ。

この場合、所有権移転登記申請を行うにはどうしたら良いか?

~回答~

このようなケースでは、登記手続を行う前に、当該不動産所在地を管轄する地方裁判所に、所有権移転登記手続請求の訴えを起こします。

ただ、訴えの相手方となる売主は不明なので、訴え提起の前提として、公示送達の申立を併せて行います。公示送達の期間は2週間です(民事訴訟法第112条)。

公示送達の申立には、住居所・就業場所等の調査報告を行う必要がありますので、相手方となる売主の状況(現在のご住所やお勤め先など)や、当該不動産の状況などをお調べ下さい。裁判所から更に詳しい調査を指示される場合があります。

なお、手続は裁判所だけでは済まされず、判決が確定した旨の判決正本を登記原因証明情報として、当該不動産を管轄する法務局に、所有権移転登記申請を行わねばなりません。

不動産登記法第60条で、「権利に関する登記の申請は、登記権利者と登記義務者が共同して行わなければならない」とありますが、確定判決による登記は不動産登記法第63条で、「申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、他方が単独で申請することが出来る」とされています。

従って、判決で確定すれば、買主が単独で登記申請を行うことが出来ます。

ちなみに、費用は固定資産税評価額によって算出されるため、当該不動産やケースによって異なります。