処分禁止の仮処分

「処分禁止の仮処分」の登記は、債権者が、債務者を相手取って、所有権確認の訴訟を提起したもので、本訴において勝訴した場合には、仮処分の登記の後に登記された甲区および乙区のすべての登記が、裁判所の嘱託に基づいて抹消されます。

裁判には多くの時間を要するため、その間、債務者が勝手に目的物を処分してしまう危険性を回避するための制度で、逆に、むやみに目的物に制約を与えることにもなりかねないため、債権者には担保提供が要求されます。

不動産を担保にして金融機関において(根)抵当権を設定される場合、もしくは、不動産を売却される場合、当該仮処分の登記が抹消された状態でないと、ご融資や売買が不可能になる恐れがあります。

ただ以下のような場合、前述の所有権ならびに(根)抵当権が抹消される可能性は極めて低いものと思われます。

  • 仮処分の登記から年月を経過しているような場合
    (本訴が継続中である可能性が低い)
  • 仮処分の登記の後に合筆、地目変更、所有権移転、(根)抵当権の設定の登記を経由している場合
  • 私道部分のみ仮登記が残っていて、本地ならびに建物に仮処分の登記が残っていない場合
    (私道部分のみ登記の消し漏れの可能性大)

なお、当該仮処分の登記を抹消するには、1.債権者が裁判所に取下の手続をする、2.債務者が保全取消申立の手続をする…のいずれかの方法を採らなければならず、2.の場合には1.の場合と異なり、当該仮処分の登記の取下の権利を有する者からの手続ではないため、裁判所から債権者に対して呼び出しを要するなど、1.の場合より日数が多くかかります。